センターのいちおし
ルポ貧困大国アメリカ1, 2(岩波新書)
2010.07.13
タイトル ルポ貧困大国アメリカ1, 2(岩波新書)
編著者名 堤未果著
出版社 岩波書店
出版年 2008-2010
内容と紹介 区分:和図書/ID:100114155, 100125516/所在:文庫・新書/請求記号:368.2/TM/[1]-2

「あなたはアメリカをどう思いますか?」

こんなラディカルな問いを直に投げかけられたことはありませんが、もし聞かれたとしても私はある程度答えられると思っていました。ちなみに私は一度もアメリカに行ったことがありません。アメリカ人の友人もいません。にもかかわらずこの問いに答えられる自信があったのは、私たちの日常生活にアメリカについての言説が溢れているからです。チャンネルを回せば報道番組で解説員はアメリカについてコメントを寄せ、買い物に行けばアメリカの音楽が流れ、雑誌をめくればアメリカについての記事が目に付きます。そして知らない間にアメリカについてそこそこ語れるような気になっていました。この本の読了後、それが皮層的な思い込みであったことに気付かされました。

日本エッセイストクラブ賞、新書大賞2009をダブル受賞した1巻と今年1月に出版された2巻で語られるアメリカは、私たちが日常生活で触れるアメリカの言説とは一味違います。そこは市場原理主義を徹底させた弱肉強食の社会です。いや弱者がより一層弱者となるシステムを強化したおそるべき社会です。一般市民は盲腸ひとつで132万円の医療費を請求されます。善良な顔をした学資ローン会社には消費者保護法が適用されず、世間知らずの学生からサラ金以上の取立てを行っています。

誰が通院や奨学金で雪ダルマ式に増える借金を背負わされると思うでしょうか? そんな理不尽な借金の返済を一度でも滞納したなら、待ち構えているのは自宅、職場、友人すべてを巻き込む督促電話の嵐と、時給300円程の下流市民生活です。追い詰められた市民はなかば必然的に犯罪に手を染めます。

さて、みなさん。受刑者が見ることの出来ない民間刑務所のHPには、うそのようなキャッチコピーが掲載されています。

「第三世界並みの低価格で国内アウトソーシングを! 」

つまり、完全に追い詰められた受刑者を待っているのは、何をするにも法外な料金を請求され、より借金を増やすだけの刑務所生活と、発展途上国をさらに下回った賃金で酷使される奴隷生活といっても過言ではない状況なのです。

この本で語られるアメリカには救いがありません。そしてそれは私たちの将来と全く無関係とはいえないでしょう。
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