センターのいちおし
国史大辞典を予約した人々 : 百年の星霜を経た本をめぐる物語
2014.05.20
タイトル 国史大辞典を予約した人々 : 百年の星霜を経た本をめぐる物語
編著者名 佐滝剛弘
出版社 勁草書房
出版年 2013.6
内容と紹介 『国史大辞典』。皆さんは手にとってみたことがありますか?
歴史遺産学科生にはおなじみの日本史の辞典であり、当センターでは1979年から1997年までかけて再編集された全17巻を所蔵しています。データベースのジャパンナレッジにも収録されており、学内のパソコンからアクセスすることができます。

この辞典の初版が刊行されたのは1908(明治41)年。その前年に、この辞典を予約購入した約8,800人の名簿『国史大辞典予約者芳名録』が予約者に配布されました。
著者は数年前にこの名簿を、食事をした群馬県の旅館の女将から「古い書物がお好きなら、うちにこんなものが」と見せてもらい、その面白さに惹き込まれます。予約者の氏名のみが都道府県別に並べられただけのその冊子には、与謝野晶子、岩崎弥太郎、折口信夫、佐々木信綱などの文学者、文化人を始め、言論人、商人、旧大名家、建築家、動物学者など、歴史の分野にとらわれない多ジャンルの知識人の名前があったのです。発刊当時はまだ子どもだった太宰治や芥川龍之介らも、その実家、親の名前での予約がありました。また全国各地の大学、小中高校、官庁・自治体、監獄や軍隊の名前での予約も見受けられました。

サラリーマンである著者はその名簿のコピーをもとに、休日を利用してさまざまな資料や図書館・機関に、時には実際に購入した人物の子孫に当たり、そのエピソードをひも解いていきます。
辞典の価格は20円。当時の教員の初任給が15円という時代でしたので、今なら20~25万円ほどになります。決して安くはないその辞典を予約したのは財政的にゆとりのある華族や実業家・組織だけではなく、向学心に燃え少しでも書物から知識を吸収したいという思いから予約に踏み切った、生活をきりつめて購入代金に充てているような、世間的には無名の人物も少なくないようです。

日本史や文化史の専門家や研究者ではない著者が古い文献に惹かれ、ひとつひとつ資料を探し、100年前の人々の知識欲に触れていきます。時には探し当てる事ができず迷宮入りする、その過程も興味深く、文献調査や研究方法の入門書としても興味深い一冊です。
リンクURL 国史大辞典を予約した人々 : 百年の星霜を経た本をめぐる物語