センターのいちおし
夜想曲集 : 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語
2013.06.04
タイトル 夜想曲集 : 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語
編著者名 カズオ・イシグロ著 ; 土屋政雄訳
出版社 早川書房
出版年 2009
内容と紹介 映画にもなった『日の名残り』でイギリス最高の文学賞であるブッカー賞を受賞し、寡作ではありますが世界中にファンの多い日系イギリス人作家 カズオ・イシグロの最新作にして初短編集です。

副題に“音楽と夕暮れをめぐる”とあるように、音楽をモチーフとした5つの物語が楽章のように構成されています。登場する有名無名のミュージシャンたち、その家族や友人たちはそれぞれの日常に少し行き詰まっていて、癒してくれるはずの音楽さえその特効薬には成りえない、というようなビターな読後感がどの作品にも漂います。文中にちりばめられた『恋はフェニックス』、『パリの四月』、『ニアネス・オブ・ユー』といった古いアメリカンソングやジャズが、ゆるやかに聴こえてくるような描写が心地よく、ゆったりとその世界に浸る事ができます。

ベネチアの観光地で稼ぐ流しのギタリストが、共産圏出身の母が大ファンでもあるアメリカのベテラン大物シンガーと出会い、ゴンドラの上で秘密のセレナーデライヴを開催するという最初の物語『老歌手』は、音楽的カタルシスを感じることができる作品。
若き日にミュージシャンを目指していたというカズオ・イシグロがどんな音楽を作っていたのか、ちょっと気になりますね。
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