○論文類、編著・共著(一部例外を除く)、文庫類の多くは割愛、夥しい数の著書のなかから、著者の画期となったと思われるもののみに限って、刊行年次順に示した。文中の敬称は略した。
昭和18〜39年 ・ 昭和41〜平成12年
(13)昭和41年(1966)
  『社会科学大事典』全二十巻(鹿島出版会)
 歴史・哲学・政治学・法学・社会学・経済学等々に専門化した学問を統合することで、新しい「社会科学」を創造しようとした。著者がリーダーとなって、日本全国の学者・研究者を動員し、昭和46年(1971)に完成した。同年、「毎日出版文化賞」を受賞する。

(14)昭和41年(1966)
  『町人の実力』(中央公論社・『日本の歴史17』)
 これまで幕末維新の激動期を好んで書いてきた著者が、江戸時代の十八世紀、比較的泰平の時代を選んで、文化や思想に秘められた豊かな可能性を発見、活写した。折からの歴史ブームに大いに貢献した力作である。

(15)昭和41年(1966)
   訳注『統道真伝』上巻(岩波書店・文庫)
 安藤昌益の原典の一部が、初めて文庫本という一般に入手しやすい形で出版された意義は大きい。翌年に下巻が刊行された。

(16)昭和44年(1969)
  『葉隠』(中央公論社・『日本の名著17』)
 肥後藩士山本常朝の談話を聞書きした『葉隠』の現代訳。後半の訳は駒敏郎が分担した。「武士道といふは死ぬ事と見付けたり」という有名なフレーズを含む「死狂い」の精神は、戦後の泰平の世に生きる著者にとって、「男の復権」の叫びとして惹き付けられたようだ。以後、『武士道の系譜』(昭和46年中央公論社)、『叛骨の士道』(昭和50年中央公論社)など、武士道に関する精力的な著作がつづく。

(17)昭和46年(1971)
  『歴史のたてよこ』(講談社)
 いろいろな雑誌に掲載したエッセイを集めたものだが、円熟した歴史家の筆が縦横に振るわれている。以後、すぐれた歴史随筆『日本歴史の水源地』(昭和47年文芸春秋)、『歴史と私』(昭和47年実業之日本社)、『風土の中の史実』(昭和50年読売新聞社)、『歴史と風景』(昭和58年芸艸堂)などが出版された。

(18)昭和48年(1973)
  『不惜身命』(講談社)
 前年に雑誌『小説現代』に12回にわたって連載された小品を集めたもの。あとがきに「三島由紀夫があのような死を遂げ、川端康成がまた自らの命を絶つというようなことがあってから、私自身も〈人間は如何に死すべきか〉ということを考えるようになった」と述べて、幕末の思想家、志士たちの劇的な生涯をその死から捉えなおしている。この新しい視点は後に小説を書く動機の一つとなる。

(19)昭和49年(1974)
  『もう一つの維新』(新潮社)
 雑誌『別冊 潮』(後に『日本の将来』に改名)、『別冊 小説新潮』に連載し、三年かかって完成した最初の小説。主人公の長井雅楽はその遠大な政治構想によって藩と日本を導こうとして非命に倒れた人物。著者は「どんなに頑張ってみても、これは歴史である。歴史家の筆なのだ」と謙遜しているが、小説的手法によって初めて松陰や晋作の対極にある人物が描かれたことは興味深い。これにつづく小説として、『小説・葉隠』(昭和50年角川書店)、『洛陽燃ゆ』上下(昭和53年講談社、京都新聞に途中まで連載)などがある。

(20)昭和54年(1979)
  『骨董入門』(平凡社)
 若いころから骨董趣味のあった著者の洒脱な語り口によって、入門書というより巧みなエッセイとなった。後に著者自慢のコレクションを写真入りで紹介した『骨董亦楽』(昭和63年芸艸堂)が出版されている。

(21)昭和59年(1984)
  『あゝ東方に道なきか』(中央公論社)
 雑誌『歴史と人物』に連載。明治新政府に抗して「もう一つの維新」をめざした理想主義者前原一誠の評伝。吉田松陰から前原一誠までの長い道のりは、著者自身の内なる旅でもあった。

(22)昭和61年(1986)
  『日本地酒紀行』(淡交社)
 近鉄百貨店発行の「まいたいむ」に二年半にわたって連載、日本全国の名酒を実際に訪ね歩いて、歴史家で趣味人の著者ならではのユニークな名酒紀行となった。他に味に関するエッセイに『味雑事談』(昭和51年芸艸堂)がある。

(23)平成9年(1997)
  『日本の滝紀行』上下(舞字社)
 雑誌『FRONT』の巻頭にあしかけ10年にわたって、坂口チクローのカラー写真とともに掲載された。名滝を論じながら、その地の歴史を、文学を、人間を髣髴とさせるみごとな「滝の文化史」である。

(24)平成14年(2002)
  『武士の道』(アートデイズ)
  『日本文化論』(京都造形芸術大学)

昭和18〜39年 ・ 昭和41〜平成12年
 
 
2002年3月22日 
学校法人 瓜生山学園
京都造形芸術大学
 
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